修道院便り2009年


 イエス様につかまえられた      Sr  樋口  碩子


 「来たよー!」 男性の声がする。出てみると狭い玄関いっぱいに浜尾司教様(後の枢機卿)が立っておられ、ニコニコ。やっぱり寄ってくださった。
 この日は聖ヨハネ・マリア・ビアンネの記念日で例年通り不二聖心において、司祭職を考える少年たちの集まりが催され、私たちも心を合わせて召命のための祈りを捧げていた。

 お茶を差し上げながら、居合わせた姉妹たちと司牧のニュースなどを聞かせていただく。

 ふと司教様ご自身の司祭職への道についておたずねすると、「僕は中学生(旧制)の頃きかん坊でね、当時の不良少年たちがしていたような悪さは全部やった。ところがある時から司祭職への想いに取りつかれてしまって、困ったなあ、どうしよう、神父様に話したら、こんな僕のことだから一笑に附されるか、反対されるに決まっている、と思った。けれどもこの想いは消えるどころか強くなる。 思い切って今日話そうか、それとも次の日曜日に・・・と思いながら司祭室の前を行ったり来たり。

 ドアが少し開いたままで、今田健美師が机に向って書き物をしておられる姿が見える。何度目かに通り過ぎようとした時「ふみお文郎さん、お入りなさい。」とそのままの姿勢で言われる。おずおずと入っていくと、師は書き物を続けながら、横に立っていた私に「決心がつきましたか?」と一言。 こうして僕はつかまえられてしまったんだよ。」

司祭年に当たって想い出した15年前の裾野での出来事です。 



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