
ところで、「ルビンの杯」というのを御存じだろうか。右の図形がそれである。さて、何が見えるであろうか。これは、デンマークの心理学者ルビン(1886−1951)が1915年に発表した「図地反転図形」である。この図形は杯とも、あるいは向きあった二つの横顔としても、見ることができる。白い方に焦点をあてると「一つの杯」が描かれている図形として認識され、黒い方に焦点をあてると「二人の横顔のシルエット」として認識される。杯(白)が図として認識されるとき、その他の部分(黒)は地となり、2人の横顔(黒)が図として認識されるときは、その他の部分(白)が地となる。杯が「図」として浮かびあがるか、横顔が「図」になるかは見る人の意識の自由であって、両者は瞬時の選択によって容易に交替する。しかし、杯と2人の横顔が同時に認識されることはない。このような反転図形では、白黒の両領域を同時に見る事はできないと説明される。