戻 る

出会い   鈴木喜代

 残暑がつづく昼下り、“宅急便でーす”の声に、この日受付当番だった私は玄関テーブ
ルに置かれた北海道からのダンボール箱(トウモロコシ)が目に入りました。

 途端に私はTさんからだ!とわかりました。
「今年もお元気で!!」
と嬉しさと喜びで胸がいっぱいになりました。

 Tさんは私を教会へ導いてくださった方です。
 初めてお会いした当時は、銀行に勤めていてカトリック信者でした。
私は19才・・・
勤め始めていた私は、時折通りすがりの彼女の凛とした姿が気になりました。
生きるとは・・・と
いっぱしの思いを抱いていた私にその姿は神々しく感じられていました。 

 ある日、思い切って銀行の窓口で声をかけた。教会に行ってみたい・・・と。
Tさんは唐突な私を笑顔で受けとめてくれました。

 初めての教会、周りの人に親切にしてもらい、要理にも通ったのだったが洗礼の時で
はなかった。
ミサの中での拝領の時に、信者たちは左右の席から真中で一列になって祭壇に向い、席
にひとり残っている私は
“私もあの中に入りたい”
と神の国があることを思ったことを今でも鮮明に覚えている。

 Tさんは山歩き、スキー、旅行と沢山の交流と思い出を作ってくれたのだったが、何
年かして彼女は東京転勤となり、お互いにいろいろなことがあり遠くなってしまった。
それでも私の内にはTさんの生きる姿勢が心の糧として残っていた。

 時がすぎ、教会に足を入れてから10年目に洗礼、それから15年目に修道院に入っ
た。そして、聖年を経たある年ある偶然から突然の手紙が届いたのが丁さんからだった。
Tさんは、定年後札幌に戻っていた。
なつかしい便りは
“主にあって祈りのうちに一致して”
という言葉そのものを実感させてくれた。

 それから毎年大地の実りが届く。
会うことも語ることもないのだが、祈りの中で分かつ喜びがいっぱいなので幸せだ。
お互いに年を重ね、それぞれの人生を歩んでいる。これで良しと思っている。

 限りない神の計らいの中、慈しみ深い御父のあたたかさに心からの賛美と感謝をせず
にはいられない。