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 もう何十年も前、私の家にはミーコというメスの猫が同居していました。生まれたばかりで捨てられていたのを弟が連れてきて、私も一緒になって強引に母を説き伏せて、家で飼うことになったのです。

 まだ小さくて、とにかくかわいいので、子供の私たちは夢中になっていました。そして私たちはミーコと一緒に育ち、大きくなり、学校へ行き、就職し、私は修道院へ、弟はすでに関西の方で働き始めていました。

 結局、ミーコは猫としては大変な長寿である23歳まで生き、母に事情を聞くと、ある日どこかへいなくなった、とのこと。

 母は家族中で一番ミーコと生活した時間が長かったので、がっくりしてしまい、「きっとマリア様の膝の上で安らかに天国に行ったに違いない」と自分に言い聞かせていました。
 さて、なぜミーコの話から始めたかというと、今修道院には「はな子」という猫がほぼ毎日やってくるからです。

 もっとも彼女(?)は私がフランスの本部修道院から戻ってくる前から出入りしていたので、私より先輩です。はな子は少なくとも2回、計8匹は子猫を生んでいる立派な母猫です。このうち5匹は去年生まれ、私の弟夫婦が苦労の末に捕獲し、保護猫活動をしている従妹のところへ連れていき、今はそれぞれ大切に育ててくださる家庭で幸せになっています。

 はな子は自分の子供たちのことを忘れたのかどうなのかわかりませんが、修道院はとりあえず安全だと思っているようです。
 敷地内で大きな工事があったので心配していましたが、作業員の方々がお帰りになったあと、ショベルカーにのぼってみたり、大きな袋の中身を点検してみたりして、すっかり仕事に参加しているつもりのようでした。