九月の初め、残暑の続く白子を離れ、フランスの母院に着いた。
写真で見た建物が目に入った。
姉妹達が、テラスでレクリエイションを楽しんでいた。
私が階段を上がって行くと、姉妹たちがたどたどしく「こんにちは」と声をかけて下さっ
た。高齢の姉妹達が練習を重ねて挨拶を覚えたのでしょう。
この時、私は不思議な感覚をあじわった。彼女達の中に入ってなんの違和感もない。初
対面で、国も言葉も文化も習慣もちがう人達なのに、前から知っていたかのように!
・・・修道院に入って・・・ウワーなんと古めかしい・・・と呟いていた。
戸も壁も家具も。そして磨り減った木の螺旋階段を踏んだ時、主の言葉が心に響いてきた。
「はきものをぬぎなさい、あなたの立っている場所は聖なる土地である」と。
幾多の人々が訪れ、又去り、笑い、呻き、涙し、一本の老木の年輪のように、深い沈黙の
内にどれほどのドラマを包み込み今に流れていることか。
私にとってここに生活している老齢の姉妹たちと日常を共にする事は大きな恵みです。
さまざまな障害を抱え、不自由さの中にあっても、淡々と唯一なるお方を見つめながら
自分の歩幅で静かに歩んでいる姿は、なんと美しいことか。
深くきざまれたシワ、ゴツゴツした大きな手、穏やかな笑顔の奥に、少女のころ山で
見たひっそりと咲く小さな野の花を思い出した。
創造主の前に小さなもの、貧しいもの、それでも力の限り咲いています。
風にゆれながら・・・神をみつめながら・・・
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