修道院便り2007年


庭の仲間たち       Sr  岡島 静代

我が家の庭は修道院の庭としては、小規模のもの。ゆっくり一回りするのに 5 分もあれば十分。でも、そこで繰り広げられるドラマは感動的なものですよ!

 そのドラマの主役は生き物たち。小さな命の営みが神さまの慈しみを輝かせています。

五月になると、窓辺においたパン屑やご飯粒を目指して雀たちがやってくる。この時期はやっと羽がそろった小雀がピイチク、パアチクやかましい。親がいちいち口にいれてやる。身体はもう普通のすずめなのに、くちばしがまだしっかりしていないからだ。自分でついばんでも、すぐ落としてしまう。幾羽かの子を持つ親鳥は自分が食べる暇もなく、必死で口に入れてあげる。涙ぐましい親子愛!でも小鳥たちは餌を巡って争いも激しいのである。

ヒヨドリさんは特にそうである。いつも二羽一緒に来るヒヨドリが、相手のヒヨドリにすごい意地悪なのである。自分はまだ口の中にりんごの皮をいれたまま、たくさん残っている皮を (つい)ばみにくる相手をすごい勢いで追い払う。私には夫婦(めおと)に見えて、これぞドメスティックヴァイオレンスか、と思うのだが・・思い過ごしかな?

ツグミは going my way の鳥。背筋と首をすっと伸ばし、サッサと歩きながら土を口ばしでけっていく。冬になると同じ位の大きさの赤はらがやって来る。縄張り争いで決闘が始まる。2〜3メートル羽ばたいて激しく闘う。大抵はツグミの勝利ですぐにけりがつく。ああ、人間の世界も同じですな。ただ、違うのは、鳥たちは丸腰で堂々と闘う。
  ツグミといえば、ある日ツグミの子供がどうしたわけか、よちよちと歩いていた。親にはぐれてしまったのかしら。パンくずをあげたら、いやいやする。見ていると、よたよたしていた大きな蚊をサッと捕らえる。「上手ね!」と手を叩いて褒めてあげたら、得意そう。でも飛べないみたいなので、このままでは猫にやられてしまうと思い、「こうやってね、飛ぶのよ」と両手を広げてデモンストレーション。でもプイと行ってしまった。あれから、ずっと気になった。親に会えただろうか。猫に会わないだろうか・・どうしたかな。

虫の世界も頑張っている。夏になると、たくさんの虫、特に我が庭はトカゲのマンション。歩くとわざわざ素早く横切るのである。こんな風景は珍しくありませんよね。ところが、ある夕暮れ、昼の暑さも和らいで遠くの空を見上げながら瞑想に耽りつつ、ふと足もとを見ると、一匹のトカゲ。それもきれいな黄金色。足もとを行ったり来たり。「どうしたの。おいで」と思わず声を掛ける。するとトカゲさん、うしろを振り返った。トカゲの振り返りというのを、初めて見た瞬間!今まで、トカゲなんて気味が悪くてよく見たことはなかった。でも、本当はこんなに可愛くって、ひょうきんな顔をしていたんだあ!特に目がやさしい。「お前さん、可愛いね」。そしたら嬉しそうに寄ってくるではないか!良くみるとおなかが大きい。産卵の場所を捜しているのかな。しばらく一緒に遊んで、やっとトカゲさん草むらにもぐって行った。トカゲとの友情!なんて素晴らしい、でしょう?

秋になると、窓辺の朝顔も花が咲き終わり、種が熟してくる。ある日、枯れていく葉を眺めながら、祈っていると、一匹の虫が葉っぱを く切っては運んでいく。蜂かな?何してるのかな?どこに運んで行くのかな?一日中何度もやって来ては上手に円く切って行く。ある日、外に出て、運んで行く先を突き止めようと目を凝らす。三日目にやっと行く先を突き止めた。ところがその近くになると、姿が消えてしまうのだ。ミステリー??その辺を這いつくばって・・絶対見つけるぞ・・ああ!見つけた!レンガタイル壁とコンクリートの 5 mmくらいの隙間の穴をのぞくと、切って運んだ葉っぱを丸くお布団にして巣作り最中。そう、冬に向かってのホーム造りね、頑張ってね・・そっと離れながら、幸せな気持ち。大切な宝を見つけたような・・。朝顔の葉っぱは最後まで自分を与えます。

ある夜、窓を開けたら、目の前に、まあ!中指ほどもある二匹のいも虫が!それがそれが、とってもきれいな、緑と赤と黄色のカラフルないも虫。きっと美しい蝶々の幼虫なのでしょう。ところが、びっくりしたのは、その食べっぷり!ムシャムシャあっという間に大きな口で大きな葉っぱを食べていくさまは、まことにユーモラス、こちらも大きな口を開けて、ただ茫然と、観想・・春に素晴らしい蝶が飛んでいましたよ。

白鷺、ウグイス、鳩、コオロギ,いなご、蛙の話し・・まだまだ一杯、生き物たちのドラマは続いています。でも書き切れないから、聞きたい人は白子に来てね。皆様もまわりをごらんなさい。きっと素敵な出会いがありますよ。心がふぁーと温かくなるドラマ、神さまの壮大な御心を体験するのは、身近な所からではないでしょうか?

と、ここまで書いたら、亡霊が・・台所に出没したゴキブリを追いかけて、ピシャ!軒の下に巣を作った熊蜂にスプレーでシュー、お米をかじったネズミを毒殺!・・ああ、これらの命の亡霊が・・人間て・・矛盾した生き物なのですね。

私の心はとっても複雑・・・。

 

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