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Sr.金井 玉枝


 今年の春、妹から、目の手術を東大病院で受けるという知らせがあった。
 コロナの病棟が、眼下の病棟まで進出して、白内障と緑内障の 手術を受ける妹の入院は数か月も伸ばされてようやく入院し、 手術を受けて片方の目は視野も広がり見えるようになったという妹 の声を電話で聞けた。

 4人兄弟の中でも私と妹は身近に育てられた。
 学齢になり、私は2年遅れで、2歳年下の妹と同級で小学校に入学し、黒板がよう やく見える前列に妹と並んで席を取らせていただき、いつも妹が手引きをしてくれ た。
 妹は勉強が嫌いで一日中外で男の子や女の子たちと遊んでいた。「いじめっ子 が来たら私がやっつけてやるからね」と言いながら私を近所の子たちの仲間に誘い 出したりした。

 家では、私はまだいくらか見えていたがいつも日当たりのよい居間の座敷でうつ 伏せになり、ラジオから流れる童謡歌手の歌を聞きながらいっしょに歌って楽しん でいた。
 見えないことが当たり前のように生活している私に、妹から目の手術のために祈 りを依頼されて不思議な気持ちになっている。

 私は小学校から盲学校に転校し、大学在学中にカトリック教会で洗礼の恵みにあ ずかり、修道生活に召されました。緑内障のおかげでこんなに幸せな生活を送れる ようになったのです。